
自家消費型太陽光発電設置するにあたって、「中小企業経営強化税制」をお考えではないでしょうか。設置するのであれば、できるだけ費用を抑えておきたいものです。
そこで今回は、自家消費型太陽光発電をお得に設置する制度「中小企業経営強化税制」についてご紹介いたします。ぜひ最後までご覧ください。
目次
中小企業経営強化税制とは?
中小企業経営強化税制とは、簡単にいうと「特定の設備を導入した際に、国から支援が受けられる制度」のことを指します。
元々、日本には「中小企業経営革新支援法」という法律がありましたが、度重なる改正を経て2016年7月に中小企業経営強化税制へ名称変更されました。
どんなメリットがある?
中小企業経営強化税制には、以下の3つのメリットがあります。
・税制措置
・金融支援
・法的支援
このうち、最もメリットが大きいとされているのが「税制措置」です。
具体的には「即時償却」か「買付金額の税額を10%控除」のいずれかを選択して適用できるため、企業の金銭的負担を大きく減らせます。
どんな目的で制定された?
中小企業経営強化税制の目的は「中小企業の経営力・生産性の向上」にあります。
日本の中小企業は長年「少子高齢化による人手不足」や「国際競争の激化による生産性の低迷化」が懸念されていました。
実際に、中小企業庁が「事業体の継続・発展のために」という報告書を公開して注意喚起しているほどですから、事態は極めて深刻だといえるでしょう。
こういった状況を打破するために、国が中小企業をサポートする「中小企業経営強化税制」を定めたのです。
太陽光発電は対象になる?
太陽光発電の種類は、自家消費型と投資型の2種類に分けられますが、このうち前者の「自家消費型」が中小企業経営強化税制の対象となります。
自家消費型と投資型の違いは、以下の通りです。
自家消費型:自社の太陽光パネルで発電した電気をそのまま自社で使うこと
投資型:自社の太陽光パネルで発電した電気を電力会社に売却して利益を得ること
元々、日本の企業ではローリスクでおこなえる投資事業として、投資型太陽光発電の方が人気でした。
しかし、中小企業経営強化税制が施行されたことと、FIT法(固定価格買取制度)の改正により、2020年現在では、自家消費型の方が主流になっています。
税額控除の内容
中小企業強化税制では、買付金額の10%の税額控除が受けられます。
しかし、「資本金が3000万~1億円以下の法人」のみ、控除税額が7%までとなっています。
また、税額控除が受けられる上限は、その年の法人税額・所得税額の20%までとなっているので注意しましょう。
「即時償却」とは?
即時償却とは、該当設備の買付金額をその年の経費に全額計上することです。
通常、買付金額は設備ごとに定められた年数に応じて、毎年決まった金額を減価償却として計上しますが、即時償却ではそれらを初年度に一括で計上します。
即時償却のメリット
即時償却のメリットは、簡単にいうと「利益を圧縮することによって、支払う税金額を減らせる」ことでしょう。具体的には、資金を早めに回収したり、回収した資金をすぐさま別の設備に投資するといった活用方法が考えられます。
ただし、支払う税金の総額が減るわけではないので、あくまで恩恵を受けられるのはその設備を購入した年度のみです。
「税額控除」と「即時償却」はどちらを選んだ方がいい?
先ほども解説した通り、中小企業経営強化税制では「即時償却」か「買付金額の10%の税額控除」のいずれかを選択して適用できます。
※税額控除…メリット:支払う税金の総額が減る
デメリット:すぐに節税効果は得られない
※即時償却…メリット:節税効果を短時間で得られる
デメリット:支払う税金の総額は変わらない
基本的には「長期的に考える場合は税額控除、短期的に考える場合は即時償却」といったように選択していくと良いでしょう。
中小企業経営強化税制が適用されるための条件
中小企業経営強化税制が適用されるための条件は、以下の3つがあげられます。
1.青色申告者であること
2.個人事業主または中小企業者であること
3.対象業種であること
これらの条件を具体的に見ていきましょう。
1.青色申告者であること
青色申告は、確定申告の種類の1つです。
代表的な種類としては他に白色申告があげられますが、このうち事業所得・不動産所得・山林所得を得ている個人事業主が青色申告を行えます。
2.個人事業主または中小企業者であること
個人事業主とは、「開業届を提出しているものの、会社を設立せずに事業を行う人」を指します。
いわゆる「自営業」といえばイメージしやすいいでしょう。
それに対し中小企業者とは「資本金や出資金が5000万~3億円以下の法人」や「従業員数が50~300人以下の法人」を指します。
3.対象業種であること
中小企業経営強化税制には対象業種も指定されています。
以下に一覧を記載するので、該当するかどうかのチェックにお役立て下さい。
※対象業種一覧
農業、林業、漁業、水産養殖業、鉱業、建設業、製造業、ガス業、情報通信業、一
般旅客自動車運送業、道路貨物運送業、海洋運輸業、沿海運輸業、内航船舶貸渡
業、倉庫業、港湾運送業、こん包業、郵便業、卸売業、小売業、損害保険代理業、
不動産業、物品賃貸業、学術研究、専門・技術サービス業、宿泊業、飲食サービス
業、生活関連サービス業、映画業、教育、学習支援業、医療、福祉業、協同組合
(他に分類されないもの)、サービス業(他に分類されないもの)
※対象外業種一覧
電気業、水道業、鉄道業、航空運輸業、銀行業、娯楽業(映画業を除く)、性風俗関連特殊営業
引用:中小企業等経営強化法に基づく支援措置活用の手引き
(https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kyoka/2019/190411zeiseikinyu.pdf)
「娯楽業」は要注意
前述の一覧表にも記載されている通り、娯楽業は映画業を除き、中小企業経営強化税制の対象とならないので注意が必要です。
娯楽業の分類については、総務省が作成する「日本標準産業分類
(https://www.soumu.go.jp/toukei_toukatsu/index/seido/sangyo/02toukatsu01_03000044.html#n)
に細かく記載されていますので、こちらも合わせてチェックしましょう。
中小企業経営強化税制の対象設備
1.A類型(生産性向上設備)
設備の種類 | 用途または細目 | 最低金額 | 販売開始時期 |
機会装置 | 全て | 160万円以上 | 10年以内 |
工具 | 測定及び検査工具 | 30万円以上 | 5年以内 |
器具備品 | 全て | 30万円以上 | 6年以内 |
建物附属設備 | 全て | 60万円以上 | 14年以内 |
ソフトウェア | 設備の稼働状況に係る情報収集機能及び分析・指示機能をするもの | 70万円以上 | 5年以内 |
2.B類型(収益強化設備)
設備の種類 | 用途または細目 | 最低金額 |
機会装置 | 全て | 160万円以上 |
工具 | 全て | 30万円以上 |
器具備品 | 全て | 30万円以上 |
建物附属設備 | 全て | 60万円以上 |
ソフトウェア | 全て | 70万円以上 |
A類型とB類型どちらを選ぶ?
中小企業経営強化税制を受けるにあたって、太陽光発電設備はA類型とB類型のどちらを選ぶべきなのでしょうか。見極めるためのポイントを解説していきます。
10年以内に販売開始された設備ならA類型
基本的に、中小企業経営強化税制を受ける際には、A類型を選ぶのがお勧めです。
というのも、A類型の申請に必要な「工業会証明書」は設備メーカーを仲介しながら発行します。
それに対し、B類型に必要な「経営産業局による確認書」は、経営産業大臣の確認を受けなくてはならないため、申請書の作成に時間がかかってしまうのです。
そのため、該当設備が販売開始10年以内である場合はA類型を選びましょう。
中古等、10年以上前に販売開始された設備ながらB類型
該当設備が10年以上前に販売されたものや中古品であった場合、必然的にB類型を選ぶことになります。前述の通り「経済産業局による確認書」は作成に時間がかかるというデメリットがありますが、受けられる控除税額の内容はA類型と変わりません。
手続き方法
次に手続き方法についてご紹介いたします。
A類型の手続き方法
A類型の場合、その設備が要件を満たしているかどうかを照明する「工業会証明書」が必要です。
これを発行するためには、まず該当設備のメーカーに書類の発行を申し込みます。
その後、届いた発行書を経営力向上計画に添付して税務申告をすれば、中小企業経営強化税制が受けられます。
B類型の手続き方法
B類型の場合、該当設備の投資利益率が正しいかどうかを照明する「経済産業局による確認書」が必要です。これを発行するためにはまず申請書を作成し、公認会計士や税理士に確認してもらわなくてはなりません。
その後、申請書を持って経済産業局で説明し、問題がなければ優遇措置が受けられます。
まとめ:中小企業経営強化税制を活用して自家消費型太陽光発電を導入してみては?
今回ご紹介した中小企業強化税制や、各自治体から随時発表されている補助金等を活用すれば、自家消費型太陽光発電設備の導入において償却期間の短縮や導入時の初期費用を抑え、運用コストを下げることができる可能性があります。ぜひ補助金や税制優遇も併せて確認し、施工業者へお問い合わせすることをお勧めいたします。